EC実務ラボ
法務中級者

EC事業者のためのステマ規制ガイド|レビュー・SNS施策の注意点

2026年3月23日

2023年10月施行のステマ規制をEC事業者向けに解説します。なりすまし型・利益提供秘匿型の2類型、レビュー特典・インフルエンサー・UGC転載・アフィリエイトの施策別OK/NG判断、モール別のレビュー規約、実際の措置命令事例、ステマにならない施策設計まで整理します。

対象読者: レビュー施策・インフルエンサー活用・SNSマーケティングを行うEC担当者で、ステマ規制への対応を確認したい方

この記事で分かること

  • ステマ規制の2類型(なりすまし型・利益提供秘匿型)と規制対象が分かる
  • レビュー特典・インフルエンサー・UGC転載・アフィリエイトのOK/NG判断基準が分かる
  • 実際の措置命令事例と、ステマにならない施策設計の方法が分かる

2023年10月1日から、ステルスマーケティング(ステマ)が景品表示法の不当表示として正式に規制対象となりました。ECモールのレビュー施策、インフルエンサーへの商品提供、口コミの自社サイト転載など、EC事業者が日常的に行う施策のあちこちにステマリスクが潜んでいます。

本記事では、ステマ規制の基本から、EC実務の施策場面ごとのOK/NG判断基準、モール別の対応、実際の措置命令事例まで、この1記事で整理します。

ステマ規制とは?2023年10月施行の概要

ステマ規制とは、広告であるにもかかわらず広告であることを隠す表示を禁止する景品表示法の規制です。

ステルスマーケティングの定義

ステルスマーケティングとは、事業者が自社の商品・サービスについて、広告であることを隠して第三者の感想や口コミに見せかける表示行為です。消費者庁は2023年3月にステマ告示(内閣府告示第19号)を制定し、同年10月1日から施行しています。

2つの類型:なりすまし型と利益提供秘匿型

類型定義EC事業者での例
なりすまし型事業者自身(従業員含む)が消費者を装って投稿する社員がECモールに消費者として高評価レビューを投稿する
利益提供秘匿型第三者に依頼して広告であることを隠して投稿させるインフルエンサーに商品を提供し、PR表記なしで投稿してもらう

規制対象は「事業者」のみ

規制対象となるのは、商品・サービスを供給する**事業者(広告主)**です。事業者から依頼を受けて投稿するインフルエンサーやアフィリエイターは規制対象外です。つまり、罰則を受けるのはインフルエンサーではなく広告主であるEC事業者側です。

「インフルエンサーに任せたから自社は関係ない」という認識は誤りです。投稿内容の決定に関与した事業者が規制対象であり、PR表記の管理責任も事業者にあります。

EC事業者が違反しやすい5つのパターン

以下の5パターンは、EC事業者が日常業務で意図せず違反しやすいケースです。

パターン1:従業員による消費者偽装投稿

社員やアルバイトが消費者を装ってECモールにレビューを投稿したり、SNSで自社商品を推薦する行為です。販促担当や営業担当が「個人の感想として」投稿する場合もなりすまし型に該当します。

ただし、販促とは無関係な従業員が自主的に投稿する場合は規制対象外とされています。

パターン2:レビュー内容を指示した上での特典提供

購入者にレビュー投稿を依頼すること自体は問題ありませんが、投稿内容を指示(「★5を付けてください」「○○と書いてください」等)した上で特典を提供するとステマに該当します。

パターン3:インフルエンサーへの商品提供(PR表記なし)

インフルエンサーに商品を無料提供し、SNSで紹介してもらう場合、「広告」「PR」等の表記がなければステマに該当します。高額商品の提供や、投稿内容への関与がある場合は特にリスクが高くなります。

パターン4:UGC・口コミの自社サイト転載(二次利用)

インフルエンサーが自主的に投稿した口コミを、事業者が自社ECサイトやLPに転載(二次利用)する場合も注意が必要です。元の投稿にPR表記があっても、転載先で広告であることが消費者に認識できない形で掲載するとステマに該当します。

2024年にはライザップ社や大正製薬がこの「二次利用」のパターンで措置命令を受けています。

パターン5:アフィリエイト広告の「広告」表記漏れ

アフィリエイト広告(成果報酬型広告)を利用している場合、アフィリエイターのサイトやブログで**「広告」「PR」等の表記が漏れている**と、広告主であるEC事業者がステマ規制違反に問われる可能性があります。

アフィリエイト広告のステマ対策として、ASP(アフィリエイトサービスプロバイダ)各社はアフィリエイターへのPR表記義務をガイドラインに追加しています。広告主としては、ASPを通じてPR表記の徹底を確認してください。

レビュー施策とステマ規制の境界線

レビュー施策のOK/NGを判断する基準は「事業者が表示内容の決定に関与したかどうか」です。

レビュー施策のOK/NG判断表

施策OK/NG理由
レビュー投稿を中立的に依頼する(内容指示なし)✅ OK投稿者の自主的意思に基づく
レビュー投稿者全員にクーポンを配布する(内容指示なし)✅ OK内容に関与せず、全投稿者に等しく提供
Amazonの「レビューをリクエストする」ボタンを使う✅ OKAmazon公式機能。内容の指示なし
高評価(★4以上)を条件にクーポンを配布する❌ NG評価内容に条件を付けている
「○○と書いてください」と投稿内容を指示する❌ NG事業者が表示内容の決定に関与
サクラレビュー業者に依頼する❌ NG事業者が投稿自体を依頼・管理
社員が消費者を装って投稿する❌ NGなりすまし型ステマ

モール別のレビュー規約

各モールはステマ規制施行に合わせてレビューガイドラインを強化しています。

モール主なルール違反時の処分
楽天市場店舗関係者のレビュー投稿を全面禁止。レビュー記載・削除の強要を禁止。2023年8月にステマ関連ガイドライン新設違反点数80点(レベルⅥ:14日間改装中表示・違約金140万円)
Amazon高評価と引き換えのギフトカード提供を禁止。機械学習で年間2億件超の不正レビューを検知。不正レビューブローカーへの法的措置商品レビューの削除・出品停止・アカウント永久停止
Yahoo!2023年9月にガイドライン改定。「出店者の意に沿った内容の投稿」全般を禁止対象化。24時間365日パトロール商品非公開・休店・退店

楽天のレビュー活用方法は楽天レビュー活用の基本、Amazonのレビュー施策はAmazonレビュー対策、Yahoo!のレビュー対策はYahoo!ショッピングのレビュー対策で詳しく解説しています。

インフルエンサー・SNS施策の注意点

インフルエンサー活用では「PR表記の徹底」と「投稿内容への関与の程度」が判断のポイントです。

PR表記の正しい書き方

ステマに該当しないためには、投稿が広告であることを消費者が容易に認識できる方法で表記する必要があります。

表記方法具体例適切さ
投稿冒頭にテキストで明記「【広告】○○社より商品提供を受けて紹介しています」
関係性タグを目立つ位置に配置「#PR」「#広告」「#プロモーション」を冒頭のハッシュタグに
動画の冒頭テロップ「この動画は○○社の提供です」
大量のハッシュタグの中に埋没「#美容 #コスメ #おすすめ ... #PR」(最後尾に埋没)△(不十分と判断される可能性)
表記なし✕(ステマ)

商品提供のみでもステマに該当するケース

インフルエンサーに商品を無料提供するだけの場合、以下の条件を満たすとステマに該当する可能性があります。

  • 投稿内容について具体的な指示を行った
  • 投稿前に内容のチェック・修正を求めた
  • 高額商品の提供で「好意的な投稿」を暗黙に期待していると認められる

逆に、商品提供のみでインフルエンサーが自主的に投稿内容を決定し、PR表記もある場合はステマには該当しません。

過去の投稿にも遡及適用される

ステマ規制は2023年10月1日以降も閲覧可能な状態にある投稿に適用されます。施行前に投稿されたものでも、現在閲覧可能であれば規制対象です。

過去にPR表記なしで投稿されたインフルエンサー投稿がある場合は、以下の対応が必要です。

  1. インフルエンサーに連絡し、PR表記の追加を依頼
  2. 連絡が取れない場合は、自社サイトでの二次利用を中止
  3. 連絡不可かつ二次利用もしていない場合は、規制対象外の可能性が高い

実際の違反事例に学ぶ|措置命令を受けたケース

2024年にステマ規制に基づく初の措置命令が出されました。以下の3事例を押さえておきましょう。

事例1:クリニックの口コミ投稿指示(2024年6月・初の措置命令)

医療法人社団祐真会が、クリニックに来院した患者に口コミサイトでの投稿を依頼し、投稿内容に事業者が関与していた事例です。ステマ規制に基づく初の措置命令として注目されました。

事例2:ライザップのインフルエンサー投稿の二次利用(2024年8月)

ライザップ社がインフルエンサーの投稿を自社の広告に転載(二次利用)した際、転載先で広告であることが消費者に認識できない形で掲載していた事例です。元の投稿にPR表記があっても、二次利用時に広告性が失われると違反になるという重要な判例です。

事例3:大正製薬のインフルエンサー投稿(2024年11月)

大正製薬がインフルエンサーに投稿を依頼した際の表示がステマ規制に違反するとして措置命令が出された事例です。大手企業でも対策が不十分であれば措置命令の対象となることを示しています。

3事例の共通点: いずれも「事業者が表示内容の決定に関与した」にもかかわらず「広告であることが消費者に認識できない形で表示されていた」点が問題とされました。

特にUGC(ユーザー生成コンテンツ)の二次利用は要注意です。インフルエンサーの投稿を自社LPやECサイトに転載する場合は、転載先でも「広告」「PR」等の表記を明確にしてください。

違反した場合のペナルティ

ステマ規制違反は措置命令の対象ですが、現時点では課徴金の対象外です。

ペナルティ内容
措置命令違反行為の差止め・再発防止策の実施・消費者への周知を命令。企業名と違反内容が公表される
課徴金現時点では対象外(将来的な拡大の可能性あり)
措置命令違反時2年以下の懲役または300万円以下の罰金(法人は3億円以下)
モールでのペナルティ商品非公開・休店・退店(モール規約違反として処分)
レピュテーションリスク措置命令は企業名付きで公表される。報道・SNS拡散による信用毀損

課徴金は現時点で対象外ですが、措置命令による企業名の公表はレピュテーション(評判)に大きなダメージを与えます。実際にライザップ・大正製薬の措置命令は広くニュースで報道されました。モール別のペナルティ詳細はモール別違反点数と対処法を参照してください。

レビュー施策における法的リスクの全体像はECのレビュー・口コミと法的リスクで詳しく解説しています。

ステマにならないレビュー・SNS施策の設計

ステマ規制を守りながらレビュー獲得やSNS施策を行うための設計指針を整理します。

レビュー施策の安全な設計フロー

  1. レビュー依頼は中立的に: 「レビューを書いてください」のみ。評価や内容の指示をしない
  2. 特典は全投稿者に等しく: 高評価を条件にしない。投稿後に自動でクーポン配布する仕組み
  3. 投稿内容に関与しない: レビュー内容のチェック・修正依頼は行わない
  4. 社員の投稿を禁止: 販促関係者による消費者偽装投稿を社内ルールで明確に禁止

インフルエンサー契約時のチェック項目

チェック項目確認ポイント
PR表記の義務を契約書に明記しているか「広告」「PR」等の表記を投稿の目立つ位置に配置する条件
投稿内容の自由度を確保しているか事業者が内容を「指示」するのではなく「参考情報」として提供
二次利用の条件を定めているか自社サイト転載時にも広告表記を維持する条件
過去投稿の管理方法を定めているか投稿が閲覧可能な限りPR表記を維持する条件

UGC転載時の表記ルール

ユーザーの口コミやインフルエンサーの投稿を自社サイト・LPに転載する場合は、以下のルールを守ってください。

  • 転載箇所の近くに「広告」「PR」等の表記を付与する
  • 口コミの選別(好意的な投稿のみ掲載)を行う場合、その旨を明記する
  • 口コミの文言を編集・加工した場合、編集した旨を明記する

景品表示法全体の基本についてはECの景品表示法入門を参照してください。

よくある質問(FAQ)

Q1. ステマ規制とは何ですか?いつから施行されていますか?

ステマ規制は、広告であることを隠す表示を禁止する景品表示法の規制で、2023年10月1日から施行されています。「なりすまし型」(事業者が消費者を装って投稿)と「利益提供秘匿型」(第三者にPR表記なしで投稿させる)の2類型があります。規制対象は事業者(広告主)であり、インフルエンサー等の第三者は対象外です。

Q2. レビュー特典を提供するのはステマに該当しますか?

レビュー内容を指示せず、全投稿者に等しく特典を提供する場合はステマには該当しません。ただし「★5を付けたらクーポン」のように高評価を条件とした特典はNG、「こう書いてください」と内容を指示した上での特典もNGです。投稿者の自主的な意思による投稿であることが重要です。

Q3. インフルエンサーに商品を無料提供するのはステマですか?

商品提供だけでは直ちにステマにはなりませんが、2つの条件が必要です。①投稿に「広告」「PR」等の表記があること、②投稿内容を事業者が指示していないこと。この2つを満たせばステマには該当しません。逆にPR表記なしの投稿や、内容の指示・修正要求がある場合はステマに該当します。

Q4. PR表記はどのように書けばいいですか?

「広告」「宣伝」「プロモーション」「PR」等のタグを、投稿の冒頭や目立つ位置に記載します。消費者が一目で広告であると認識できるサイズ・位置が重要です。ハッシュタグのみ(#PR)でも認められますが、大量のハッシュタグの末尾に埋もれる形では不十分と判断される可能性があります。

Q5. 過去の投稿もステマ規制の対象ですか?

はい。2023年10月1日以降も閲覧可能な投稿は規制対象です。施行前のインフルエンサー投稿でも、現在閲覧可能であれば対応が必要です。インフルエンサーに連絡してPR表記の追加を依頼するか、自社サイトでの二次利用を中止してください。

Q6. ステマ規制に違反するとどうなりますか?

消費者庁から措置命令が出され、企業名と違反内容が公表されます。現時点では課徴金は対象外ですが、措置命令に従わない場合は2年以下の懲役または300万円以下の罰金(法人は3億円以下)です。ECモールでは独自のガイドライン違反として商品非公開・休店・退店の処分もあります。

Q7. ECモール(楽天・Amazon・Yahoo)でのレビューもステマ規制の対象ですか?

はい。ECモール上のレビューでも、事業者が投稿内容の決定に関与していればステマ規制の対象です。楽天は2023年8月にステマ関連ガイドラインを新設(違反点数80点)、Amazonは機械学習で年間2億件超の不正レビューを検知、Yahoo!は2023年9月にガイドラインを改定し24時間パトロールを実施しています。

まとめ

ステマ規制の対応チェックリストを整理します。

  • ステマ規制は2023年10月施行。広告であることを隠す表示は景品表示法違反
  • 規制対象は「事業者(広告主)」。インフルエンサーではなく依頼側が罰則を受ける
  • レビュー特典は内容指示なし・全投稿者対象ならOK。高評価条件・内容指示はNG
  • インフルエンサー活用はPR表記を必ず依頼。投稿内容の指示は避ける
  • UGC・口コミの二次利用は転載先でも広告表記を明確に維持する
  • 過去の投稿にも遡及適用。閲覧可能な投稿はPR表記を追加
  • モール別に厳格化。楽天は違反点数80点、Amazonは年間2億件の不正レビュー検知

今すぐやるべきステップ: 自社のレビュー施策とインフルエンサー施策を本記事のOK/NG判断表と照合してください。特に「過去のインフルエンサー投稿にPR表記があるか」「UGCの二次利用で広告表記が明確か」の2点を最優先で確認しましょう。

次に読むべき記事

よくある質問

Q. ステマ規制とは何ですか?いつから施行されていますか?

A. ステマ規制は、広告であるにもかかわらず広告であることを隠す表示を禁止する景品表示法の規制です。2023年10月1日から施行されています。規制対象は商品・サービスを供給する事業者(広告主)であり、インフルエンサー等の第三者は対象外です。

Q. レビュー特典を提供するのはステマに該当しますか?

A. レビュー内容を指示せず、全投稿者に等しく特典を提供する場合はステマには該当しません。ただし「高評価を条件とした特典」や「投稿内容を指定した上での特典提供」はステマに該当する可能性があります。

Q. インフルエンサーに商品を無料提供するのはステマですか?

A. 商品提供だけでは直ちにステマにはなりませんが、投稿内容に関与(内容の指示・修正要求等)した場合はステマに該当します。また、PR表記なしで投稿させるとステマとなるため、「広告」「PR」等の表記を依頼してください。

Q. PR表記はどのように書けばいいですか?

A. 「広告」「宣伝」「プロモーション」「PR」等のタグを投稿の冒頭や目立つ位置に記載します。消費者が広告であると認識できるサイズ・位置で表示することが重要です。ハッシュタグのみ(#PR)でも認められますが、他のタグに埋もれないよう注意してください。

Q. 過去の投稿もステマ規制の対象ですか?

A. はい。2023年10月1日以降も閲覧可能な状態にある投稿は規制対象です。施行前に投稿されたものでも、現在閲覧可能であればステマに該当する可能性があるため、過去投稿の総点検が必要です。

Q. ステマ規制に違反するとどうなりますか?

A. 消費者庁から措置命令(違反行為の差止め・再発防止策の命令)が出され、企業名と違反内容が公表されます。現時点では課徴金の対象外ですが、措置命令に従わない場合は2年以下の懲役または300万円以下の罰金(法人は3億円以下)が科されます。

Q. ECモール(楽天・Amazon・Yahoo)でのレビューもステマ規制の対象ですか?

A. はい。ECモール上のレビューも、事業者が投稿内容の決定に関与していればステマ規制の対象です。各モールはステマ規制施行に合わせてレビューガイドラインを強化しており、不正レビューの検知・削除体制を整えています。

月歩|EC実務ラボ運営者

EC運営歴10年以上。商品企画・販売に関わる事業会社で、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピングの運営に携わり、商品ページ改善、広告運用、販促設計、データ分析を担当してきました。モール広告では、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピングで月間数百万円規模の運用を経験しています。

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