EC顧客分析の基本|RFM分析・セグメント別施策の設計方法
2026年3月20日
RFM分析の進め方5ステップ、5つの顧客セグメントと施策テンプレート、コホート分析、モール別の顧客データ取得方法まで、EC顧客分析に必要な知識を体系的にまとめます。
対象読者: 顧客データを分析してセグメント別の施策を設計したいEC担当者(中級者)
この記事で分かること
- ✓RFM分析の進め方5ステップが分かる
- ✓5つの顧客セグメント(優良/安定/新規/離反リスク/休眠)の特徴と施策が分かる
- ✓RFM・デシル・CPM分析の使い分けが分かる
- ✓コホート分析でリピート率を追跡する方法が分かる
- ✓楽天・Amazon・Yahoo!の顧客データ取得方法が分かる
「メルマガを全顧客に同じ内容で送っている」「クーポンを一律で配っている」——もし心当たりがあるなら、顧客分析に取り組む価値は非常に大きいです。
EC運営では、全顧客の20%が売上の80%を生み出しているケースが珍しくありません(パレートの法則)。全員に同じ施策を打つのではなく、顧客をセグメントに分類し、それぞれに最適な施策を設計することで、LTV(顧客生涯価値)の向上と広告効率の改善を同時に実現できます。
本記事では、RFM分析の進め方から5つの顧客セグメントの施策テンプレート、コホート分析、モール別の顧客データ取得方法まで、EC顧客分析を体系的に解説します。
| セグメント | 特徴 | 推奨施策 | 優先度 |
|---|---|---|---|
| 優良顧客(VIP) | 直近購入あり・高頻度・高金額 | VIP特典・先行販売・ロイヤルティプログラム | ★★★ |
| 安定顧客 | 定期的に購入・中金額 | アップセル・クロスセル・レビュー依頼 | ★★★ |
| 新規顧客 | 初回購入直後 | 2回目購入促進・フォローメール | ★★★ |
| 離反リスク顧客 | 購入間隔が空き始めている | 早期リマインド・限定クーポン | ★★☆ |
| 休眠顧客 | 6ヶ月以上購入なし | 復帰キャンペーン・ポイント失効通知 | ★☆☆ |
なぜEC運営に顧客分析が必要なのか
「全員に同じ施策」が効かない理由
初回購入の新規顧客と、10回以上リピートしているVIP顧客に同じメルマガを送っても、効果は全く異なります。新規顧客には「2回目購入の動機づけ」が必要であり、VIP顧客には「特別感のある体験」が必要です。
顧客分析を行うことで、限られた施策リソースを最もインパクトの大きいセグメントに集中できます。
顧客分析で得られる3つのメリット
- LTV向上 — セグメント別の施策でリピート率と客単価を改善
- 広告効率化 — 優良顧客に似たオーディエンスへの広告配信でCPAを削減
- 休眠防止 — 離反リスク顧客を早期に発見し、離脱前にアプローチ
RFM分析とは?EC向けに基本を解説
RFM分析は、顧客を3つの軸でスコアリングし、セグメントに分類する手法です。
| 軸 | 意味 | EC運営での具体例 |
|---|---|---|
| R(Recency) | 最終購入日からの経過日数 | 最終購入が1週間前なら高スコア、1年前なら低スコア |
| F(Frequency) | 一定期間内の購入回数 | 過去1年で10回購入なら高スコア、1回なら低スコア |
| M(Monetary) | 一定期間内の累計購入金額 | 過去1年で10万円購入なら高スコア、3,000円なら低スコア |
RFM分析がEC運営に適している理由は、購入データだけで実施できる点です。アンケートや行動ログの分析と違い、モール管理画面の注文データがあればすぐに始められます。
RFM分析の進め方5ステップ
Step 1 ─ 顧客データを収集・整理する
モール管理画面から注文データをCSVでダウンロードし、顧客ID・購入日・購入金額の3項目を整理します。
Step 2 ─ R/F/Mそれぞれをスコアリングする
各軸を3〜5段階でスコアリングします。EC業種別のスコアリング基準例を示します。
| スコア | R(最終購入日) | F(年間購入回数) | M(年間購入金額) |
|---|---|---|---|
| 5(高) | 〜14日以内 | 10回以上 | 5万円以上 |
| 4 | 15〜30日 | 6〜9回 | 3〜5万円 |
| 3 | 31〜90日 | 3〜5回 | 1〜3万円 |
| 2 | 91〜180日 | 2回 | 5,000〜1万円 |
| 1(低) | 181日以上 | 1回 | 5,000円未満 |
Step 3 ─ スコアを組み合わせてセグメントに分類する
R・F・Mの3スコアの組み合わせでセグメントに分類します。全パターン(5×5×5=125通り)を管理するのは現実的ではないため、5つのセグメントに集約するのが実務的です。
| セグメント | Rスコア | Fスコア | Mスコア | 該当顧客の割合(目安) |
|---|---|---|---|---|
| 優良顧客(VIP) | 4〜5 | 4〜5 | 4〜5 | 5〜10% |
| 安定顧客 | 3〜5 | 3〜4 | 3〜4 | 15〜25% |
| 新規顧客 | 4〜5 | 1〜2 | 1〜3 | 15〜25% |
| 離反リスク顧客 | 2〜3 | 2〜4 | 2〜4 | 15〜25% |
| 休眠顧客 | 1〜2 | 1〜2 | 1〜3 | 25〜40% |
Step 4 ─ セグメント別の施策を設計する
各セグメントに対して、最適な施策を設計します(次のセクションで詳述)。
Step 5 ─ 効果を測定し、再分析する
施策実施後、セグメント間の移動(例:新規→安定、離反リスク→休眠)を追跡し、施策の効果を検証します。RFM分析は四半期に1回のペースで再実施するのが理想的です。
5つの顧客セグメントと施策設計テンプレート
① 優良顧客(VIP) ─ ロイヤルティ強化で離反防止
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 特徴 | 直近で購入あり、購入頻度・金額ともに上位。売上の大部分を支えるコア層 |
| 構成比 | 顧客全体の5〜10%(売上の30〜50%を占める) |
| 施策 | VIP限定セールの先行案内、限定商品の優先購入権、ポイント還元率アップ、手書きメッセージ同封 |
| KPI | リピート率維持(90%以上)、客単価維持、離反率の低減 |
② 安定顧客 ─ アップセル・クロスセルでVIP化を促進
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 特徴 | 定期的に購入しているが、金額や頻度はVIPほどではない |
| 施策 | まとめ買い割引、関連商品のレコメンド、レビュー投稿依頼、定期購入プランの案内 |
| KPI | 客単価アップ、購入頻度アップ、VIPセグメントへの移行率 |
③ 新規顧客 ─ 2回目購入への引き上げが最優先
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 特徴 | 初回購入直後。2回目を買ってもらえるかが最重要 |
| 施策 | 購入後フォローメール(使い方・活用法)、2回目購入限定クーポン、次回使えるポイント付与 |
| KPI | 2回目購入率(F1→F2転換率)。ECで最も改善インパクトが大きい指標の一つ |
④ 離反リスク顧客 ─ 早期発見と再購入促進
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 特徴 | 以前は購入していたが、最近購入間隔が空き始めている |
| 施策 | 「お元気ですか?」系リマインドメール、限定クーポン(期限付き)、新商品の案内 |
| KPI | 再購入率、休眠顧客への移行防止率 |
⑤ 休眠顧客 ─ 掘り起こし施策の費用対効果を見極める
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 特徴 | 6ヶ月〜1年以上購入がない。離反した可能性が高い |
| 施策 | 復帰限定クーポン(10〜15%OFF)、ポイント失効リマインド、新商品・季節商品の案内 |
| KPI | 復帰率(目安5〜10%)。費用対効果が合わなければ施策を縮小 |
RFM分析 vs CPM分析 vs デシル分析 ─ 使い分けガイド
3手法の比較表
| 手法 | 分析軸 | 難易度 | 適したフェーズ | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| デシル分析 | 購入金額のみ | 低 | 初期 | 顧客を購入金額で10等分。全体像の把握に最適 |
| RFM分析 | R・F・Mの3軸 | 中 | 中期 | 3軸で多角的に分類。施策設計に直結 |
| CPM分析 | 顧客の状態変化 | 高 | 後期 | 購入状態の遷移(離反・復帰等)を追跡。CRM戦略に活用 |
どの分析手法から始めるべきか
- まずデシル分析 — 購入金額で顧客を10等分し、上位何%が売上の何%を占めるかを把握
- 次にRFM分析 — 3軸で精緻にセグメントを分け、施策を設計
- さらにCPM分析 — セグメント間の移動を追跡し、施策の効果を検証
初めて顧客分析に取り組む場合は、デシル分析から始めて全体像を掴むのがおすすめです。
コホート分析でリピート率を追跡する方法
コホート分析とは?
コホート分析は、「いつ初回購入した顧客か」でグループ分けし、時間経過とともにリピート率がどう変化するかを追跡する手法です。
| 初回購入月 | 1ヶ月後 | 2ヶ月後 | 3ヶ月後 | 6ヶ月後 |
|---|---|---|---|---|
| 1月コホート(100人) | 25% | 18% | 15% | 10% |
| 2月コホート(120人) | 30% | 22% | 18% | 13% |
| 3月コホート(90人) | 28% | 20% | 16% | — |
2月コホートのリピート率が他月より高い場合、「2月に実施した施策(クーポン・フォローメール等)が効果的だった」と判断できます。
コホート分析で見るべき指標
- 2回目購入率(F1→F2転換率) — 初回から2回目への移行率。最重要
- リピート率の減衰カーブ — 時間経過での離脱スピード。急激に減衰する場合は商品やサービスに問題あり
- LTV推移 — コホートごとの累積LTV。施策改善の効果を長期で検証
モール別の顧客データ取得方法
楽天市場 ─ RMS「顧客分析」機能とR-Mail連携
| 機能 | 確認場所 | 取得できるデータ |
|---|---|---|
| 顧客分析 | RMS > データ分析 > 顧客分析 | 新規/リピーター比率、リピート率推移 |
| R-Mail | RMS > メール配信 | 購入回数別・金額別のセグメント配信 |
| 注文データCSV | RMS > 受注管理 | 顧客ID・購入日・金額(RFM分析の元データ) |
楽天ではR-Mailのセグメント配信機能を使うことで、RFM分析の結果を直接メール施策に反映できます。
Amazon ─ Brand AnalyticsとCustomer Engagement Tool
| 機能 | 確認場所 | 取得できるデータ |
|---|---|---|
| Brand Analytics | セラーセントラル > ブランド分析 | 検索クエリ・市場バスケット分析・リピート率 |
| Customer Engagement Tool | セラーセントラル > ブランド | ブランドフォロワーへのメール配信 |
| 注文レポート | セラーセントラル > レポート | 注文データ(個人情報は限定的) |
Yahoo!ショッピング ─ R∞(アールエイト)セグメント配信
Yahoo!ショッピングでは、R∞(アールエイト)ツールを使って購入回数や金額に基づくセグメント配信が可能です。新規顧客向け・リピーター向けのクーポンを出し分けることで、セグメント別の施策を実現できます。
顧客分析から施策実行までの一気通貫フロー
| Phase | 内容 | 使うツール |
|---|---|---|
| Phase 1 | データ収集と前処理(注文CSVの整理) | スプレッドシート |
| Phase 2 | RFMスコアリングとセグメント分類 | スプレッドシート |
| Phase 3 | セグメント別の施策設計とKPI設定 | 施策設計テンプレート |
| Phase 4 | 施策実行(メール/クーポン/広告) | R-Mail / モール管理画面 |
| Phase 5 | 効果測定と再分析(四半期ごと) | スプレッドシート |
このサイクルを回すことで、顧客分析は「一度きりの分析」ではなく継続的な改善活動になります。
RFM分析でよくある失敗と注意点
失敗① ─ スコアリング基準を業種に合わせていない
食品EC(月1〜2回購入が普通)とアパレルEC(年2〜3回購入が普通)では、適切なスコアリング基準が全く異なります。自社の購入パターンに合わせた基準設定が必須です。
失敗② ─ 分析結果を施策に落とし込めていない
RFM分析は「分類して終わり」では意味がありません。各セグメントに対して具体的な施策とKPIを設定し、実行するところまでがセットです。
失敗③ ─ 一度の分析で終わり、再分析していない
顧客は時間とともにセグメント間を移動します(新規→安定、安定→離反リスク等)。四半期に1回は再分析を行い、セグメントの変化を追跡しましょう。
よくある質問(FAQ)
Q1. RFM分析とは何ですか?
RFM分析は、顧客をRecency(最終購入日)、Frequency(購入頻度)、Monetary(購入金額)の3軸でスコアリングし、セグメントに分類する分析手法です。顧客ごとに最適な施策を設計するために使います。
Q2. RFM分析のやり方は?
①顧客データを収集→②R/F/Mをスコアリング→③スコアを組み合わせてセグメント分類→④セグメント別の施策設計→⑤効果測定と再分析の5ステップです。Excelやスプレッドシートで実践できます。
Q3. 顧客セグメントの分け方は?
基本は5セグメント(優良顧客・安定顧客・新規顧客・離反リスク顧客・休眠顧客)です。RFMスコアの組み合わせで分類し、セグメントごとに施策を設計します。
Q4. 休眠顧客の掘り起こし方法は?
6ヶ月〜1年以上購入がない顧客に対して、①復帰限定クーポン(10〜15%OFF)、②新商品・季節商品の案内メール、③ポイント失効リマインドを送ります。ただし復帰率は5〜10%程度のため、費用対効果を見ながら実施しましょう。
Q5. RFM分析とデシル分析の違いは?
デシル分析は購入金額だけで顧客を10等分する簡易手法、RFM分析はR・F・Mの3軸で多角的に分類する手法です。まずデシル分析で全体像を掴み、次にRFM分析で精緻なセグメントを作るのが効率的です。
Q6. コホート分析とは?ECでの使い方は?
コホート分析は「いつ初回購入した顧客か」でグループ分けし、時間経過とともにリピート率がどう変化するかを追跡する手法です。月ごとの獲得顧客のリピート率推移を比較し、施策の効果や顧客の定着度を評価します。
Q7. ECモールの顧客データはどこから取得できますか?
楽天はRMSの「顧客分析」とR-Mail、AmazonはBrand AnalyticsとCustomer Engagement Tool、Yahoo!はR∞(アールエイト)でセグメント配信が可能です。ただしモールでは個人情報の直接取得は制限されています。
まとめ
EC顧客分析は、「全員に同じ施策」から「セグメント別の最適施策」への転換を可能にします。
- RFM分析で顧客を5セグメントに分類し、セグメントごとに最適な施策を設計する
- 最も重要な指標はF1→F2転換率(初回→2回目の購入率)。ここを5%改善するだけでLTVが大幅に向上
- まずデシル分析で全体像を掴み、次にRFM分析で精緻なセグメントを作る
- コホート分析でリピート率の推移を追跡し、施策の効果を検証する
- 休眠顧客への過度な投資は要注意。新規獲得CPAと比較して費用対効果を判断する
- 四半期に1回は再分析を実施し、セグメント間の移動を追跡する
まずはモール管理画面から注文データをダウンロードし、デシル分析で「上位何%の顧客が売上の何%を占めているか」を確認するところから始めてください。EC担当者が見るべきKPIでKPI全体の管理方法を確認し、EC売上分析の実践方法と合わせて活用すると、分析の精度が向上します。
よくある質問
Q. RFM分析とは何ですか?▼
A. RFM分析は、顧客をRecency(最終購入日)、Frequency(購入頻度)、Monetary(購入金額)の3軸でスコアリングし、セグメントに分類する分析手法です。顧客ごとに最適な施策を設計するために使います。
Q. RFM分析のやり方は?▼
A. ①顧客データを収集→②R/F/Mをスコアリング→③スコアを組み合わせてセグメント分類→④セグメント別の施策設計→⑤効果測定と再分析の5ステップです。Excelやスプレッドシートで実践できます。
Q. 顧客セグメントの分け方は?▼
A. 基本は5セグメント(優良顧客・安定顧客・新規顧客・離反リスク顧客・休眠顧客)です。RFMスコアの組み合わせで分類し、セグメントごとに施策(VIP特典・アップセル・2回目購入促進・復帰キャンペーン等)を設計します。
Q. 休眠顧客の掘り起こし方法は?▼
A. 6ヶ月〜1年以上購入がない顧客に対して、①復帰限定クーポン(10〜15%OFF)、②新商品・季節商品の案内メール、③ポイント失効リマインドを送ります。ただし復帰率は5〜10%程度のため、費用対効果を見ながら実施しましょう。
Q. RFM分析とデシル分析の違いは?▼
A. デシル分析は購入金額だけで顧客を10等分する簡易手法、RFM分析はR・F・Mの3軸で多角的に分類する手法です。まずデシル分析で全体像を掴み、次にRFM分析で精緻なセグメントを作るのが効率的です。
Q. コホート分析とは?ECでの使い方は?▼
A. コホート分析は「いつ初回購入した顧客か」でグループ分けし、時間経過とともにリピート率がどう変化するかを追跡する手法です。月ごとの獲得顧客のリピート率推移を比較し、施策の効果や顧客の定着度を評価します。
Q. ECモールの顧客データはどこから取得できますか?▼
A. 楽天はRMSの「顧客分析」とR-Mail、AmazonはBrand AnalyticsとCustomer Engagement Tool、Yahoo!はR∞(アールエイト)でセグメント配信が可能です。ただしモールでは個人情報の直接取得は制限されています。
EC実務ラボ編集部
Amazon・楽天・Yahoo!ショッピングの3モール運営経験をもとに、EC担当者が実務で使えるナレッジを整理しています。広告運用、商品ページ改善、分析、販促設計が主な領域です。
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